そのヒートテック、資産になりますか?

どうも真下です。

朝の通勤、ふと周りを見渡せばユニクロのダウンや感動パンツを着ている人がどれだけいるでしょうか。おそらく、あなた自身もその一人かもしれません。

私たち30代サラリーマンにとって、ユニクロは「生活のインフラ」です。しかし、投資対象として見たとき、ファーストリテイリング(9983)は「値がさ株(株価が高い銘柄)で手が出しにくい」「すでに上がりきっているのでは?」という印象が強いのではないでしょうか。

「もっと早く買っておけばよかった」

そう思う瞬間は誰にでもあります。しかし、投資の世界に「遅すぎる」はありません。重要なのは、「今から入って、まだ伸び代があるのか?」を見極めることです。

本記事では、過去最高益を更新し続けるファーストリテイリングが、今後も私たちの資産を増やしてくれるパートナーになり得るのか、それともピークアウトの懸念があるのか。忖度なしで分析します。

概要:ただの服屋ではない「LifeWear」の強み

ファーストリテイリングのメイン事業は、言うまでもなく「ユニクロ(UNIQLO)」と「ジーユー(GU)」です。しかし、投資家として注目すべきは「服を売っている」ことではなく、「情報を商品化するスピード(SPAモデル)」「LifeWear(究極の普段着)」という独自のポジションです。

1. ZARAやH&Mとは違う戦い方

競合のZARA(インディテックス)が「最新の流行を最速で店舗に並べる(トレンド追従)」のに対し、ユニクロは「流行り廃りのない、機能的で高品質なベーシック(素材開発)」で勝負しています。

これにより、売れ残りのリスクを抑えつつ、ヒートテックやエアリズムのような「指名買い」される商品を積み上げてきました。

2. 新たな成長エンジンは「欧米」

これまでファストリの成長は日本と中国が支えてきましたが、2025年現在の主役は完全に「北米・欧州」にシフトしています。

「日本のユニクロ」から「世界のUNIQLO」へ。欧米でのブランド認知が爆発的に向上し、現地の稼ぐ力が急加速しています。これが現在の株価を支える最大の根拠です。

業績:4期連続の最高益、その中身を分解する

直近の決算(2025年8月期)を確認しましょう。数字は嘘をつきません。

【2025年8月期 連結業績】

  • 売上収益:3兆4,005億円(前期比 +9.6%)
  • 営業利益:5,642億円(前期比 +12.6%)
  • 純利益:4,330億円(前期比 +16.4%)

売上高3兆円の大台を突破し、利益面でも2桁成長を維持しています。特に注目すべきは、海外ユニクロ事業が全体の利益の過半数を稼ぎ出している点です。

主要株価指標(2025年12月現在・推定値)

指標数値サラリーマン投資家の視点
株価約54,000円100株で約540万円。分割後も依然として高額。ミニ株(単元未満株)の活用も検討圏内。
PER (株価収益率)約38倍日経平均平均(約15倍)よりかなり割高。しかし「成長企業」としては許容範囲とされることが多い。
PBR (株価純資産倍率)約6.5倍非常に高い。市場からの期待値(ブランド価値)が極めて高いことを示す。
配当利回り約0.9%インカム(配当)狙いには不向き。あくまで値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う銘柄。
ROE (自己資本利益率)約20%非常に優秀。株主から預かったお金を効率よく増やしている証拠。

※株価・指標は市場変動により日々変わります。最新情報は証券会社のアプリで必ず確認してください。

株価は右肩上がりのトレンドを描いていますが、PER38倍というのは「将来の成長」をかなり織り込んだ価格です。「今の業績に対して安いか?」と問われれば、「決して安くはない」のが現実です。

データ比較:世界の巨人との距離

「世界一のアパレル企業」を目指すファストリ。ライバルとの差はどうなっているでしょうか。

企業名売上高規模特徴投資判断のポイント
Inditex (ZARA)約6兆円世界No.1。圧倒的な物流網とトレンド対応力。高収益体質。王者。安定感はあるが、成長率ではユニクロが猛追中。
ファーストリテイリング約3.4兆円世界No.3。アジア基盤+欧米成長。機能性ウェアに強み。アジア発のグローバルブランドとして、まだ欧米に「空白地(出店余地)」があるのが強み。
しまむら (8227)約0.6兆円国内中心。低価格・実用衣料。高効率経営。安定しているが、世界的な成長ストーリーは描きにくい。配当狙いならアリ。

しまむらや良品計画(無印良品)も優秀な企業ですが、「世界一を奪取する」というスケール感において、ファストリは別格の動きをしています。「日本にいながら、世界経済の成長を取り込む」なら、やはりファストリに分があります。

リスク:ここが「損」の分かれ道

良いことばかりではありません。私たちが汗水垂らして稼いだ給料を投じる以上、リスクには敏感になるべきです。最大の懸念点は「中国」です。

1. チャイナ・リスクの顕在化

長年、ユニクロの成長エンジンは中国でした。しかし、直近の決算では「グレーターチャイナ(中国・香港・台湾)」の減収減益が目立っています。

中国国内の消費低迷に加え、地政学的な緊張(政治発言による不買運動や渡航制限など)が株価を急落させる場面も増えています。

「欧米が伸びているから大丈夫」と見るか、「中国が足を引っ張る」と見るか。ここが投資判断の分かれ目です。

2. 円高への転換

ファストリは海外売上比率が高いため、円安は追い風(利益の嵩上げ)になります。逆に、今後日銀の利上げなどで急激な円高が進んだ場合、業績の見た目が悪化し、株価の調整局面が入る可能性があります。

3. PERの高さ

PER38倍は、成長が鈍化した瞬間に「割高」と判断され、株価が急落するリスクをはらんでいます。「決算が良かったのに株価が下がる(材料出尽くし)」という現象が起きやすい銘柄であることは覚悟が必要です。

まとめ:30代サラリーマンはどう動くべきか

ファーストリテイリングへの投資についての結論です。

  • 長期目線なら「買い」の余地あり欧米での成長ストーリーはまだ始まったばかりです。世界一のアパレル企業になるまでの道のりを考えれば、現在の株価も通過点に過ぎない可能性があります。
  • 短期勝負は危険中国情勢や為替に左右されやすく、ボラティリティ(価格変動)が激しいです。日々の株価に一喜一憂したくないなら、積立感覚で見る必要があります。
  • 戦略:単元未満株(ミニ株)での参入100株(約540万円)は集中投資になりすぎてリスクが高いです。1株(約5.4万円)から購入できるサービスを使い、ポートフォリオの一部(例えば5〜10%)に組み込むのが、守りながら攻める30代の賢い戦略と言えるでしょう。

「毎日着る服」から「資産を増やす服」へ。

次にユニクロの店舗に行ったとき、レジの行列を見て「これは自分の利益にもなる」と思えるようになれば、あなたの投資家としての視点は確実にレベルアップしています。