なぜ今、イーライリリーなのか?

どうも真下です。

「もっと早く買っておけばよかった……」

米国株投資をしている方なら、ここ数年のイーライリリー(LLY)のチャートを見て、ため息をついたことがあるかもしれません。

「痩せ薬(抗肥満薬)」ブームで株価は爆発的に上昇し、時価総額は一時テスラを抜き去り、世界トップクラスの巨大企業へ成長しました。

今の株価は1,000ドル付近(※執筆時点)。30代のサラリーマン投資家にとって、決して安くない金額です。「今さら高値掴みしたくない」と躊躇する気持ちもわかります。

しかし結論から言うと、イーライリリーの成長ストーリーは「序章」に過ぎない可能性が高いです。なぜなら、彼らが戦っている市場は、人類共通の悩みである「肥満」と「認知症」だからです。

今回は、この最強製薬メーカーの実力を、数字とデータを交えて徹底解剖します。

概要:世界を救う「マンジャロ」と「ゼップバウンド」

イーライリリーは140年以上の歴史を持つ米国の製薬大手です。かつてはインスリン製剤で有名でしたが、現在は完全に別のステージにいます。

メイン事業と最大の強み

現在の最強の武器は、GLP-1受容体作動薬と呼ばれる分野です。

  1. Mounjaro(マンジャロ): 本来は糖尿病治療薬ですが、驚異的な体重減少効果があります。
  2. Zepbound(ゼップバウンド): マンジャロの成分を「肥満症治療薬」として承認を受けた製品。これが爆発的に売れています。

この2つは「スマホ以来の発明」とも呼ばれるほどのインパクトを持っています。さらに、アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」も控えており、「生活習慣病」と「高齢化」という現代社会の2大課題に対する解決策を持っている点が、他の製薬会社にはない圧倒的な強みです。

業績:数字で見る「化け物」級の成長

通常の製薬大手(ファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソンなど)は、成熟企業として安定成長(年率数%程度)が普通です。しかし、イーライリリーはベンチャー企業のような成長率を見せています。

直近の決算(2025年後半時点のトレンド)では、売上高成長率が前年同期比50%超を記録する四半期もありました。時価総額100兆円クラスの企業が、このスピードで成長するのは異次元です。

主要株価指標(参考値)

指標数値(目安)30代投資家への解説
株価$950 – $1,0501株約15万円前後。少額投資ならPayPay証券等が必要かも。
予想PER45倍 – 60倍S&P500平均(約21倍)より遥かに高い。「割高」に見えるが、成長への期待値の裏返し。
配当利回り0.5% – 0.7%配当狙いの銘柄ではない。利益はすべて「次の研究」と「設備投資」へ。
時価総額約1兆ドル世界トップ10常連。企業の倒産リスクは極めて低い。

※株価や指標は市場環境により変動します。最新データをご確認ください。

データ比較:宿敵「ノボノルディスク」との決戦

投資家の悩みどころは、「イーライリリー(LLY)と、オゼンピック/ウゴービを持つノボノルディスク(NVO)、どっちを買うべき?」という点です。

項目イーライリリー (LLY)ノボノルディスク (NVO)
主力製品マンジャロ / ゼップバウンドオゼンピック / ウゴービ
減量効果高い (臨床試験データで優勢)先行者利益があるが、効果はLLYに劣る傾向
事業ポートフォリオ肥満・糖尿病+アルツハイマー・がん肥満・糖尿病に特化
バリュエーション常にプレミアム価格 (割高)LLYよりは少し割安なことが多い

結論:

  • 安心感と多角化を狙うなら、アルツハイマー薬などのパイプラインも豊富なイーライリリー
  • 少しでも割安感を重視するならノボノルディスク
  • ただし、市場自体が巨大すぎるため、コカ・コーラとペプシのように「両社とも勝者になる」可能性が高いです。

リスク:死角はないのか?

もちろん、リスクゼロではありません。私たちサラリーマンの大切な資金を守るために、以下のリスクは頭に入れておきましょう。

  1. 供給不足(品切れ)あまりに人気すぎて生産が追いついていません。工場への巨額投資を行っていますが、供給制約が売上の天井になる可能性があります。
  2. 価格への政治的圧力「薬価が高すぎる」として米国政府から値下げ圧力を受けるリスクがあります。
  3. 副作用と長期的な安全性新しい薬のため、予期せぬ副作用が発覚した場合、株価は暴落する可能性があります。
  4. 経口薬(飲み薬)の台頭現在は「注射」が主流ですが、将来的に他社から安価な「飲み薬」が出た場合、シェアを奪われる恐れがあります(ただしLLY自身も飲み薬を開発中)。

まとめ:30代サラリーマンはこう動く

イーライリリーは、PERだけで見ると「超割高」です。バリュー株投資家なら絶対手を出さない水準でしょう。

しかし、「世界中の人々が痩せたがっている」という需要は、不景気でも無くなりません。

30代の私たちが定年を迎える頃まで、肥満と高齢化は解決すべき最大のテーマであり続けます。

投資戦略の提案:

  • 短期勝負はしない: ニュース一つで10%動くこともあります。一喜一憂せず、数年単位で持つ。
  • 押し目買い: 全体相場が下がったタイミングや、一時的なバッドニュースで下がった時こそチャンス。
  • コア・サテライト戦略: 資産のコア(核)はS&P500などのインデックスにしつつ、サテライト(攻めの枠)でLLYを組み込むのが精神的にも安定します。

「あの時買っておけば」をこれ以上繰り返さないために、まずは監視銘柄リストに入れてみてはいかがでしょうか。