その「高配当」、拾って大丈夫ですか?

どうも真下です。

「米国株、S&P500だけ買っておけばいいって言われたけど、最近の動きは退屈だ…」

「もう少しキャッシュフロー(配当金)が欲しい。でも、株価が下がっている銘柄に手を出すのは怖い」

日々仕事に追われながら、将来の資産形成に励む30代の私たちにとって、ファイザー(PFE) は非常に悩ましい存在です。誰もが知る世界的な製薬会社でありながら、コロナ特需終了後の株価は軟調。しかし、そのおかげで配当利回りは歴史的な高水準に達しています。

今のファイザーは、バーゲンセールの「お宝銘柄」なのか、それとも株価がズルズル下がり続ける「落ちるナイフ」なのか。

本記事では、感情論を抜きにして、データとビジネスモデルから「今のファイザーをポートフォリオに入れるべきか」を検証します。限られた給料から投資資金を捻出している私たちにとって、無駄な損失は許されません。結論を急がず、まずはその中身を見ていきましょう。


1. 概要:コロナの英雄、その後の「生存戦略」

ファイザーといえば、やはり「コミナティ(新型コロナワクチン)」と「パキロビッド(治療薬)」のイメージが強いでしょう。しかし、投資家として見るべきは「コロナ以外のビジネスがどう育っているか」です。

メイン事業と構造改革

ファイザーは現在、以下の分野に経営資源を集中させています。

  • 腫瘍学(がん治療): 2023年のシージェン(Seagen)買収により、抗体薬物複合体(ADC)技術を獲得。がん領域でのトッププレーヤーの地位を固めています。
  • 炎症・免疫: アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎などの慢性疾患向け治療薬。
  • ワクチン(非コロナ): RSVワクチン「アブリスボ」など、コロナ以外の感染症予防。

ファイザーの強み(Moat)

  1. 圧倒的な販売網とブランド力:世界中の医療機関にパイプを持っており、新薬を開発すれば即座にグローバル展開できる営業力は、バイオベンチャーには真似できません。
  2. M&A(合併・買収)の手腕:コロナで得た莫大なキャッシュを使い、将来の収益源となる企業を積極的に買収しています。「自社開発」にこだわらず、「時間を金で買う」戦略は、スピード感が求められる現代において合理的です。

2. 業績・株価指標:割安シグナルは点灯しているか

ここでは、感情を排して数字を見てみましょう。

30代投資家が重視すべきは、瞬間的な株価の上下ではなく、「利益に対して株価が適正か(PER)」と「投資額に対してどれだけリターンがあるか(配当利回り)」です。

主要株価指標(概算値)

指標数値(目安)評価・コメント
予想PER (株価収益率)10倍 ~ 12倍市場平均(S&P500:約20倍前後)と比較して非常に割安。不人気ゆえの低評価とも言えます。
配当利回り5.5% ~ 6.5%米国債利回りを上回る水準。高配当ETF(VYMやSPYD)よりも高いインカムが期待できます。
PBR (株価純資産倍率)1.5倍 ~ 2.0倍解散価値に近く、これ以上の大きな下値余地は限定的との見方も。
ベータ値0.6 ~ 0.7市場全体が暴落した際も、比較的動きがマイルド(ディフェンシブ銘柄)。

※数値は執筆時点の市場環境を想定した目安です。投資時は最新データをご確認ください。

株価の動き(テクニカル視点)

コロナ禍で最高値を更新した後、特需の剥落とともに株価は長期的な調整局面(下落トレンド)にありました。現在は、底値圏での「保ち合い(もみ合い)」が続いています。

これは、市場が「次の成長ドライバー(がん治療薬や減量薬など)が数字として表れるのを待っている状態」と言えます。


3. データ比較:ライバルたちと比べてどうなのか?

製薬セクターへの投資を考える際、ファイザー一択である必要はありません。同業他社と比較することで、ファイザーの立ち位置が浮き彫りになります。

比較項目ファイザー (PFE)イーライ・リリー (LLY)メルク (MRK)
今の主役がん治療、ワクチン肥満症薬(ゼップバウンド等)がん治療(キイトルーダ)
投資スタイルバリュー(割安・高配当)グロース(超成長・低配当)バランス型
株価推移低迷・横ばい右肩上がり堅調
配当利回り◎ 高い (約6%)△ 低い (約1%以下)〇 平均的 (約2-3%)
30代への推奨毎年のキャッシュフローを増やしたい人向け値上がり益で資産を爆発させたい人向け安定成長を狙いたい人向け

分析コメント:

ここ数年、市場の寵児は「肥満症薬」で大成功したイーライ・リリーやノボ・ノルディスクでした。ファイザーは「肥満症薬開発での出遅れ」が嫌気され、株価が低迷しています。

しかし、逆に言えば「期待値が低い分、少しの好材料で株価が見直される余地がある」とも捉えられます。リリーのような高PER銘柄は少しのミスで暴落するリスクがありますが、ファイザーはすでに悲観が織り込まれている点が安心材料です。

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4. リスク:ここだけは絶対に見ておくべき「落とし穴」

高配当に目がくらんで飛びつく前に、以下のリスクを許容できるか自問してください。

  • パテントクリフ(特許の崖):製薬会社の宿命ですが、主力薬の特許が切れると安価なジェネリック医薬品が参入し、売上が激減します。ファイザーも今後数年でいくつかの主力薬が特許切れを迎えます。これを補う新薬が計画通りに売れるかが最大の懸念点です。
  • 訴訟リスク:過去のZantac(胃薬)訴訟のように、予期せぬ副作用や健康被害による訴訟は株価を一時的に大きく押し下げます。
  • 米国の薬価引き下げ圧力(IRA法):米国政府はインフレ抑制法(IRA)により、高齢者向けの薬価引き下げ交渉を進めています。これが収益を圧迫する可能性があります。
  • 増配ストップの可能性:現時点では配当性向に余裕がありますが、もし大型買収や業績悪化が重なれば、連続増配が止まる、あるいは減配のリスクもゼロではありません。

5. まとめ:30代サラリーマンはファイザーをどう扱うべきか

ファイザーへの投資判断をまとめます。

【買い検討のシナリオ】

  • インカムゲイン重視: 給料以外の定期収入(配当)を増やし、精神的な安定を得たい。
  • 逆張り思考: 「人の行く裏に道あり花の山」。市場が悲観している今こそ、安く仕込むチャンスだと考える。
  • NISA枠の活用: 非課税枠で高配当を享受し、数年単位で再投資(複利運用)し続けられる。

【見送り・売却のシナリオ】

  • 短期間で資産を倍にしたい: ファイザーにそれを期待するのは間違いです。テック株や成長バイオ株を検討しましょう。
  • 減配リスクを極度に恐れる: 業績のV字回復が確認できるまでは、J&Jのようなさらに堅実な銘柄の方が安全かもしれません。

筆者の視点

30代にとって、ファイザーは「ポートフォリオの守り神」として数%組み入れるには非常に魅力的です。株価が下がっても「配当利回りが上がったから買い増しチャンス」とポジティブに捉えられるメンタルがあれば、長期的な資産形成の強力な味方になるでしょう。

ただし、「全財産を一点張り」だけは避けてください。 製薬セクター特有の「開発失敗リスク」は常に隣り合わせです。

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