どうも真下です。

「もっとも偉大な相場師は誰か?」

もしそう問われたら、多くのベテラン投資家がウィリアム・デルバート・ギャン(W.D. Gann)の名を挙げるでしょう。1900年代前半に活躍し、その生涯で5,000万ドル(現在の価値で数十億〜数百億円)もの資産を築いたとされる伝説の人物です。

しかし、彼の理論は「難解」「オカルト的」と敬遠されることも少なくありません。幾何学、占星術、古代数学を融合させたその手法は、確かに一見すると複雑です。

今回は、現代のFXや株式投資でも多くのプロが愛用する「ギャン理論」の核心について、初心者にもわかりやすく、かつ実践的に解説していきます。


1. W.D.ギャンとは何者か?

W.D.ギャン(1878-1955)は、アメリカの投資家であり、独自のテクニカル分析手法を確立したパイオニアです。彼の凄まじさは、その驚異的な勝率にあります。ある記録によると、彼は1ヶ月の間に286回のトレードを行い、そのうち264回を利益にしました。勝率は実に92.3%です。

彼がここまで相場を支配できた理由は、単なる「値動き」だけでなく、「時間」という概念をテクニカル分析に持ち込んだことにあります。

「時は価格よりも重要である。時間が来れば、価格は反転する」

これがギャン理論の根幹をなす思想です。


2. ギャン理論の核となる3つのツール

ギャンは多くのツールを開発しましたが、現代のチャートソフト(TradingViewやMT4/5など)で標準搭載されており、特に重要視されるのが以下の3つです。

① ギャン・アングル(Gann Angles)と $1 \times 1$ ライン

ギャン理論の中で最も有名で、視覚的にトレンドを把握できるツールです。

通常のトレンドラインは「安値と安値」を結んで引きますが、ギャン・アングルは「幾何学的な角度」で引かれます。

$45^\circ$線($1 \times 1$ライン)の重要性

ギャンは、「時間」と「価格」が $1:1$ で釣り合うポイントが最も重要だと説きました。これをチャート上で表現したのが、上昇または下降の $45^\circ$ のラインです。

  • $1 \times 1$ ラインより上: 強気相場(買い優勢)
  • $1 \times 1$ ラインより下: 弱気相場(売り優勢)

このラインを価格が割るか超えるかが、トレンド転換の大きなシグナルとなります。さらに、$2 \times 1$(時間は1進むが価格は2進む急騰ライン)や、$1 \times 2$(緩やかなライン)などが、強力なサポート・レジスタンスラインとして機能します。

② ギャン・スクエア(Square of 9)

これはチャート上に引く線ではなく、「数字の羅列で作られた渦巻き状の表」です。

中心に「1」を置き、その周りに時計回りに数字を配置していきます。この表を使うことで、価格の節目(サポートやレジスタンス)や、相場が転換しやすい「時間」を予測します。

例えば、ある銘柄の高値が特定の数字だった場合、その対角線上や直角に位置する数字が、次の目標価格や重要な日柄になると考えます。非常に数学的かつ神秘的なアプローチですが、現在でも「なぜかこの価格で止まる」という現象を説明する際によく用いられます。

③ サイクル理論(Time Cycles)

「歴史は繰り返す」

ギャンは相場にも四季のようなサイクルが存在すると考えました。

  • 60年サイクル: 最も重要な長期サイクル(還暦など東洋思想との共通点も指摘されます)。
  • 20年サイクル: 60年の3分の1。
  • アニバーサリー(記念日): 過去の大暴落や大天井の日付は、数年後、数十年後も意識される。

例えば、1929年の大恐慌や1987年のブラックマンデーなど、特定の「月」や「年」に相場が変動しやすいという考え方は、このサイクル理論に基づいています。


3. テクニカルだけではない!不滅の「ギャンの28のルール」

どれだけ優れた分析手法を持っていても、資金管理ができなければ破産します。ギャンが成功した真の理由は、厳格な規律(メンタル管理)にありました。

彼が遺した「28のルール」は、現代のトレーダーにとっても金言ばかりです。特に重要な5つを抜粋して紹介します。

  1. 資金の10分の1以上を1回のトレードのリスクにさらすな
    • (徹底した資金管理。連敗しても生き残るための鉄則です)
  2. ストップロス・オーダー(損切り注文)を必ず置け
    • (エントリーと同時に逆指値を置くこと。迷いは死に直結します)
  3. 過剰な売買(オーバー・トレード)をするな
    • (ポジポジ病への戒め。休むも相場です)
  4. 利益を損に変えるな
    • (含み益が出たら、ストップロスを建値などに移動させ、最低でも引き分けで終わらせる技術です)
  5. 値頃感で売買するな
    • (「高すぎるから売る」「下がったから買う」はただのギャンブルです)

この28のルールを守るだけでも、相場からの退場率は劇的に下がるはずです。


4. 現代のトレードでの実践的活用法

「ギャン理論は古すぎるのではないか?」と思う方もいるかもしれません。しかし、AIが台頭する現代においても有効です。なぜなら、相場を動かしているのは最終的には「人間の欲望と恐怖」であり、その心理構造は100年前と変わらないからです。

初心者におすすめのステップ

  1. TradingViewなどで「ギャン・ファン(Gann Fan)」を表示する
    • 直近の主要な安値(または高値)を起点に設定します。
  2. $45^\circ$ライン($1 \times 1$)との位置関係を見る
    • 価格がこのラインの上にあるか下にあるかで、目線を固定します。
  3. 他のテクニカル指標と組み合わせる
    • ギャン理論単体で使うよりも、移動平均線やRSI、水平線(ダウ理論)と組み合わせることで、「時間の優位性」と「価格の優位性」の両方を確認でき、ダマシを減らすことができます。

5. まとめ:価格と時間の均衡点を見極めろ

W.D.ギャンの教えは、単なる「線の引き方」の解説書ではありません。「相場には秩序がある」という哲学の探求です。

  • 価格と時間はバランスしようとする性質がある
  • 幾何学的な角度がサポート・レジスタンスになる
  • 完璧な分析があっても、資金管理(28のルール)がなければ勝てない

この3点を意識するだけで、チャートの見え方は劇的に変わるはずです。まずはご自身のチャートツールで、主要な安値から「ギャン・ファン」を引いてみてください。驚くほど綺麗に、$45^\circ$ラインや$2 \times 1$ラインで価格が反応している光景を目にするでしょう。

相場の魔術師、ギャンの視点を手に入れて、ワンランク上のトレードを目指しましょう。


用語解説

  • スクエア・オブ・ナイン(Square of 9): 9の二乗(81)までの数字を中心から渦巻状に配置したチャート。
  • アニバーサリーデイト: 過去の重要な高値・安値を付けた日と同月同日。相場転換しやすいとされる。
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